10種の雲形を知ろう!


空にはいろいろな形の雲が出ているが・・・

 みなさんは、空の雲を見たことがありますか? いや、見ない日はないと思います。また、空の雲を見て、きょうの天気を予想したり、きれいな色や形の雲を見て感動したりしたことがあると思います。空には、実にいろいろな形や色の雲が出現します。同じ色や形の雲は二度と出ませんから、見ていて飽きないのです。そういう雲でも、10種に分類することができます。


10種の雲形とは?
 
 世界気象機関では、雲を10種に分類しています。「巻雲」「巻積雲」「巻層雲」「高積雲」「高層雲」「積乱雲」「乱層雲」「積雲」「層積雲」「層雲」の10種です。それらの雲の名前は、高さや形、雨を降らせるかで、あるルールに従って付けられています。


「巻」という字が名前に付く雲 〜上層雲〜

1.「巻雲」(けんうん・すじぐも) - Cirrus -
  

 「巻」という字が名前に付く雲は、「巻雲」「巻積雲」「巻層雲」の3つです。この字が名前になっている雲は、空の高い所にあります。そのなかでも「巻雲」がいちばん高い所にあります。気象庁の「気象観測の手引き」(以下、「手引き」という)では、「繊維状をした離ればなれの雲で、一般には白色で羽毛状、かぎ状、直線状の形になることが多い。また、絹のようになる。」とあります。いわゆる、「すじ雲」で、この雲が出ていると、何だか清々しい気分になります。秋を代表する雲かもしれません。この雲は、晴天の時現れていることが多いです。でも、カギのように曲がっていたりすると、天候が悪化していきます。形にも注目してみましょう。


2.「巻積雲」(けんせきうん・うろこぐも、いわしぐも) - Cirrocumulus -
  
 前述の、「手引き」では、「小さい白色の片が群れをなし、うろこ状またはさざ波状の形をなした雲で、陰影はなく一般に白色に見える場合が多い。大部分の雲片の見かけの幅は1度以下である。」とあります。「うろこ雲」、「いわし雲」などの名前で知られている雲です。秋や春によく現れる雲で、この雲が出ると、天気が下り坂に向かうことが多いようです。


3.「巻層雲」(けんそううん・うすぐも) - Cirrostrtus -
  

 「手引き」では、「薄い白っぽいベールのような雲で陰影がなく、全天を覆うことが多く、通常、日のかさ、月のかさ現象を生ずる。」とあります。「うす雲」などの名前で知られている雲です。手引きにもあるように、この雲が出ると、日暈(ひがさ・にちうん)や月暈が出ることが多い。この雲が出ると、天気は確実に下り坂。翌日は雨になることがほとんど。温暖前線の前面に現れることが多いからです。


「高」という字が名前に付く雲 〜中層雲〜

4.「高積雲」(こうせきうん・ひつじぐも、むらぐも) - Altocumlus -
  

 「高」は「巻」に次いで高い所にある雲で、2種あります。まずは、「高積雲」です。「手引き」では、「小さな塊が群れをなし、斑状または数本の並んだ帯状の雲で、一般に白色または灰色で普通は陰がある。雲片は部分的に毛状をしていることもある。規則的に並んだ雲片の見かけの幅は、1度から5度までの間にあるのが普通である。」とあります。「むら雲」などの名前で知られている雲です。前述の巻積雲を大きくしたような感じの雲です。雲ができる高さが少し低いので、見かけの大きさも大きくなっているのだと思われます。


5.「高層雲」(こうそううん・おぼろぐも) - Altotratus -
  
 「高」の文字がつく雲の2番目は、「高層雲」です。「手引き」では、「灰色の層状の雲で、全天を覆うことが多く、厚い巻層雲に似ているが日のかさや月のかさを生じない。この雲の薄い部分ではちょうど、すりガラスを通してみるようにぼんやりと太陽の存在がわかる。」とあります。朧月も、この雲を通すと起こりやすい。でも、月は太陽ほど眩しくないので、薄い高層雲が出ている時に見られるのだと思います。


「乱」という字が名前に付く雲

6.「乱層雲」(らんそううん・あまぐも) - Nimbostratus - 
  
 「乱」の文字がつく雲は2つあります。「乱」の文字が付くと、雨を降らせる雲になります。その1つ目が、乱層雲です。「手引き」では、「ほとんど一様でムラの少ない暗灰色の層状の雲で、全天を覆い、雨または雪を降らせることが多い。この雲のいずれの部分も太陽を隠してしまうほど厚い。低いちぎれ雲がこの雲の下に発生することが多い。」とあります。「真っ黒な不気味な雲」と言えば、この乱層雲を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。さらに、この雲の下にやや白っぽいちぎれ雲が飛び交うと、より悪天候になりそうだと、私は感じてしまいます。乱層雲は、中層雲にも分類されています。


7.「積乱雲」(せきらんうん・にゅうどうぐも、かみなりぐも) - Cumulonimbus -
  

 「乱」の文字がつく雲の2つ目が「積乱雲」です。「入道雲」とか、「かみなり雲」と呼ばれる雲です。「手引き」では、「垂直に著しく発達している塊状の雲で、その雲頂は塔の形をして立ち上がっている。少なくとも雲頂の一部は輪郭がほつれるかまたは毛状の構造をしていて普通平たくなっていることが多い。この雲の底は非常に暗く、その下にちぎれた低い雲を伴い、普通電雷、強いしゅう雨、雹及び突風を伴うことが多い。」とあります。この雲は、「夏の夕立」のイメージがありますが、他の季節にも発生しています。衛星画像でこの雲を見ると、白いおまんじゅうのように見えています。積雲と同様に、対流雲の仲間でもあります。


「巻」も「高」も「乱」も付かない雲 
 
「巻」が付く雲はいちばん高い所にあり、その次に高い所にあるのが、「高」が付く雲です。また、「乱」が付くと、雨をもたらす雲とされています。これから書いていくのは、それらの字が名前にない雲です。


8.「積雲」(せきうん・わたぐも) - Cumulus -
  
  いちばん雲らしい雲だと思う「積雲」だと私は思います。積雲は、「わた雲」などと呼ばれていて、お目にかかることが多と思います。「手引き」では、「垂直に発達した離ればなれの厚い雲で、その上面はドームの形に隆起しているが、底はほとんど水平である。この雲に光が射す場合は明暗の対照が強い。積雲はちぎれた形の雲片になっていることがある。」とあります。この雲は、青空に浮かんでいるのがいちばん似合うと思います。また、形が変化するので、いろいろなものを連想します。積雲が発達すると雄大積雲になり、積乱雲と区別しにくくなります。しかし、積乱雲には「乱」という字があり雨を伴う雲なので、雄大積雲との違いを区別するときのポイントになるのかもしれません。なお、積雲は、対流雲に入るようです。積雲が出ていると、好天の証し。しばらくは良い天気が続くことでしょう。


9.「層積雲」(そうせきうん・うねぐも) - Stratocumulus -
  
 「層積雲」も、積雲とともによく見かける雲です。「手引き」では、「大きなかたまりが群れをなし、層状または斑状、ロール状となっている雲で白色または灰色に見えることが多い。規則的に並んだ雲片は見かけ上5度以上の幅を持っている。」とあります。この雲は、色、形ともにバリエーションが広い。厚めのふわふわした感じで、空の低い所を覆っていたら、たいてい、この雲だと思ってもよいようです。層積雲は、層雲とともに、下層雲の仲間です。


10.「層雲」(そううん・きりぐも) - Stratus -
  
 10種の雲形で最後に紹介するのが、「層雲」です。「手引き」では、「灰色の一様な層の雲で霧に似ている。不規則にちぎれている場合もある。この雲を通して太陽が見えるときにはその輪郭がはっきりとわかる。」とあります。層雲は、最も低い所に現れます。山肌などにへばりついて見えることが多く、手を伸ばせば届きそうな感じがします。また、低い山でも、山頂は雲の上に見えていることが珍しくないようです。


名前で雲の特徴を知ろう!

 これまで、10種類の雲について書いてきました。雲は、そのできる高さや形、雨を降らすか否かで名前が付けられています。雲の名前と特徴は、次のようになっています。


1.「巻」「高」と「なし」

 これらは、雲ができる高さによって付く文字です。「巻」の字が付くと上空もっとも高い所に、「高」が付くと中くらい、「巻」と「高」が名前の中に入っていなかったら、低い所にできる雲です。
2.「積」と「層」

 これらは、雲の形の違いによって付く文字です。「積」の字が付くと塊状で上にぼこぼことした感じの雲、「層」が付くと、横に広がった雲だということになります。

3.「乱」

 「乱」の字が付く雲は、降水をもたらす雲です。

4.積乱雲について

 積乱雲は、「巻」の字も「高」ぼ字も付いていないので、低層にできる雲ということになります。確かに雲底は低いが、この雲の上部は1万メートルを超えることが珍しくありません。もっとも背の高い雲だと言えます。

(注)高さや性質による分類では、
  上層運は、「巻雲」と「巻積雲」と「巻層雲」
  中層雲は、「高積雲」と「高層雲」と「乱層雲」
  下層雲は、「層積雲」と「層雲」
  対流雲は、「積雲」と「積乱雲」 のように、分類されています。

  ※「積雲」は、下層雲にも入ります。


「地震雲」ってあるの?

 テレビ番組やネット上で「地震雲」が話題になっていることがありますが、「地震雲」は存在するのでしょうか? 私は、そんな雲はないと思っています。「地震雲」として、画像がアップされている雲のほとんどが、飛行機雲や「波状雲」と呼ばれる波打った雲だからです。毎日、空を眺めていると、何ら変哲もない雲が、たまにしか見ない人たちにとっては、「不思議な雲・変わった雲=地震雲」になってしまうようです。もし、それらの雲が「地震雲」だったら、毎日のように地震が起きているということになります。日本地震学会や気象庁の専門家も、その因果関係を否定しています。みなさんも、雲をしっかりと見ましょう。雲の種類や気象状態がわかるようになると、「地震雲」なんかないということが、理解できるようになることでしょう。


参考にしたページ・おすすめの本

 数ある「雲の本」のなかで、ダントツのおすすめの本です。
  ●村井昭夫著 「雲三昧」−空を飾る雲の図鑑−・橋本確文堂
   ISBN978-4-89379-115-3
 このノートを書くにあたって、参考にしたページです。
  ●「空と雲のフォト日記」 雲日記 三重県
 サイトの管理者が毎日、撮影した雲の画像が更新されています。
  http://kokoten.raindrop.jp/index.html
  ●メールマガジン「ほしやそらのこと」
  http://melma.com/backnumber_48044/