式文解説 Liturgy expositon

ルーテル教会では礼拝に式文を用い、唱和します。それは伝統に裏付けられた知恵の宝庫です。
しかしその意味が不明では心から唱和和することが出来ません。
そこで、式文に盛られている宝のエッセンスを解説するのがこのコーナーです。
毎週水曜日に連載します。
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2014年10月01日

≪使徒信条≫10:「乙女マリアより生まれ」A:

「罪の世への降下」

*「乙女マリアより生まれ」で強調されていることは「処女性」が神性に近いしるしとして古代的価値観にしたがって強調されたが、それ以上に、「身分の低い、はしため」から生まれたことを強調し、それによって人間からの誕生が罪の世への降下であることが強調されている。

*マタイ福音書1章に「イエス・キリストの誕生の次第」が描かれているが、イエスの系図の中には貴人もいれば賤人もおり、それぞれの人物が生涯で大きな罪を犯している。神の御子、キリストが人間の罪の歴史の只中に入って来られたことを宣言しているのだ。ガラテヤ 4:4 「しかし、時が満ちると、神は、その御子を女から、しかも律法の下に生まれた者としてお遣わしになりました。」では、その人の子としての誕生が、「女から」「律法の下」への誕生が強調されている。それらはみな、人間世界が問題の多い、解放されていない、制限と束縛の下にあり、その只中に神の子が降下されたことを述べている。

*それは私たちが、新しい誕生、霊の誕生へと、引き上げられるための不可欠の伏線である。エフェソ 2:3 以下「わたしたちも皆、こういう者たちの中にいて、以前は肉の欲望の赴くままに生活し、肉や心の欲するままに行動していたのであり、ほかの人々と同じように、生まれながら神の怒りを受けるべき者でした」が、「キリスト・イエスによって共に復活させ、共に天の王座に着かせてくださいました。こうして、神は、キリスト・イエスにおいてわたしたちにお示しになった慈しみにより、その限りなく豊かな恵みを、来るべき世に現そうとされたのです。」に示されているとおりである。

*「乙女マリアより生まれ」から次に続くのは、途中のイエス様の公生涯を全て飛ばし、すぐに「ポンテオ・ピラトのもとに苦しみを受け」となり、大胆に捨象・デフォルメされて十字架の受難に引き継がれ、「イエス・キリストの死人よりの復活」へと、救いの道が一直線に示される効果を狙っている。




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