冬至なのに日暮れが遅い?!


●日暮れは冬至の日がいちばん早いんじゃないの?

 12月22日は、冬至です。冬至の日は、一年中で「昼」の時間がいちばん短くなる日です。それは、みなさんもよくご存知のことだと思います。 ところが、冬至の日に、日の出の時刻がいちばん遅く、日の入りの時刻がいちばん早くなっているかというと、そうではありません。調べてみるとわかりますが、日の入りの時刻は、12月上旬ごろにいちばん早くなります。そして、冬至のころには、それより4分ぐらいは遅くなっているのです。つまり、夕暮れも遅くなってきているのです。

●気象情報の「あすのこよみ」

 私が、このことに気付いたのは、テレビの気象情報を見ている時でした。当時は、気象情報と言わず、「天気予報」と言っていましたが・・・。各地の天気予報が放送された後に、「あすのこよみ」で、広島での日の出・日の入り、月の出・月の入り、潮(大潮とか小潮など)が伝えられますが、冬至の頃になると、日の入りの時刻が遅くなっていることに気付きました。同様に、日の出の時刻は冬至を過ぎてもだんだん遅くなっていたのです。

 ※広島での日の出・日の入りの時刻

  ・11月22日 日の出・・・6時49分 日の入り・・・17時03分

  12月 7日 日の出・・・7時02分 日の入り・・・17時00分

  12月22日 日の出・・・7時13分 日の入り・・・17時04分

   1月 7日 日の出・・・7時17分 日の入り・・・17時15分

  ・ 1月22日 日の出・・・7時14分 日の入り・・・17時29分

  ※日の出・日の入りの時刻(計算データ)は、「お星様とコンピュータ」のページで算出。  URL:http://www.star.gs/

 私もそうでしたが、何で冬至の日に日の出はいちばん遅く、日の入りはいちばん早くならないのだろうかという疑問を持ちました。後になって、それは、「均時差」によるものだとわかりました。
 

●「均時差」とは?

 見かけの太陽は24時間で1周しているかというとそうではありません。季節によってプラスマイナス15分ぐらいの違いがあります。つまり、同じ時刻でも進んで見えたり遅れて見えたりしていることがあるのです。その太陽のことを、「視太陽」と呼んでいます。しかし、それでは(太陽が同じ位置に来たときを「1日」とすると)、24時間を越えてしまったり、あるいは24時間より短かったりしてしまいます。それで、天文学では、いつでも同じ速度で動いている太陽を仮定して1日の長さにしています。その仮想の太陽のことを「平均太陽」と呼んでいます。「均時差」とは、「視太陽」と「平均太陽」との位置の差を時間に換算した値のことです。

←均時差のグラフ:時間に置き換えると30分ぐらい変化している

 

●「均時差」という現象はなぜ起きるのか?

 「均時差」は、地球が真円の軌道で公転したいたなら、また、地軸が傾いていなかったら、起きる現象ではありません。地球が楕円軌道で公転して、地軸が黄道面に対して約23.4°いるため、起こるのです。 まず、地球が楕円軌道で公転しているために起こる現象について書いていきます。地球は、わずかながら楕円軌道で公転しています。地球が太陽に近づくのは1月の初めごろ、反対に地球が最も遠ざかるのは、7月の初めごろです。ケプラーの法則(第2法則)によって、公転軌道が小さい時は公転のスピードが上がり、公転軌道が大きくなると公転のスピードが遅くなります。公転のスピードは、主星(太陽)と惑星が公転した期間の面積は同じになります。つまり、軌道が小さいほど、同じ面積にしようとすると、長い距離を公転しないといけないことになります。面積が同じ三角形を描いてみましょう。底辺の長さが短いほど高さは高くなり、逆に底辺の長さが長いほど高さは低くなります。ケプラーの法則(第2法則)が言う、主星からの距離と公転のスピード(公転期間の距離)も、似たような関係になっています。

←ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)

惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積は、一定である(面積速度一定)。

 今度は、地球の自転のことについて書いていきます。自転は、公転軌道の距離に関係なく、いつでも一定です。約24時間で1回転しています。だから、地球から見る太陽は、完全な円軌道であれば、一定時間(24時間に近い)経つと同じ所に来ているはずです。しかし、ケプラーの第2法則により地球の公転スピードが違うために、主星(太陽)からの距離が近いと、太陽は早く進んだ(回った)ようになり、結果的に早く西の空に沈んでいくようになります。地球が太陽に近づいていく秋から冬にかけては、日の入りの時刻が急に早くなっていくのはそのためです。「釣瓶落としの秋の夕日」と言われる所以でもあります。この時期は、太陽も赤道上空から照らしているので、次項に書いてあることも重なり、日没の時刻が急激に早くなっていきます。夏が過ぎると、「暗くなるのがとても早くなったなぁ」と感じたことはありませんか?

●地軸の傾きも・・・

 「均時差」が起こる要因のもう一つのことについて書いていきます。2番目の要因は、地球が黄道面に対して、23.4°あまり傾いているからです。太陽は、夏には北寄りに移動し、冬には南寄りに移動します。その南北の移動量が大きいときは、太陽はゆっくりと動き(東への移動量が小さくなる)、移動量が小さくなる春分や秋分の頃は、太陽は速く動いていきます(東への移動量が大きくなる)。そのことも、均時差を発生させる要因になっています。地球儀があれば、赤道と北回帰線・南回帰線の経線10°あたりの長さを比べてみると、赤道部分の長さのほうが少しだけ長いことがわかります。春分・秋分のとき太陽は赤道上空から照らし、夏至と冬至のときは、それぞれ、北回帰線・南回帰線上空から照らしています。その線上を、太陽が東から西へと動いているのです。下の図(南の空での太陽の動き)のように、天球を表すことができます。図では(図法の関係で)、赤緯+23.4°あたりと赤緯0°とでは、ほとんど同じ長さに表現されています。しかし、太陽の見かけの動きは、赤緯0°のときが、いちばん大きくなるのです。

←赤道・北回帰線・南回帰線

←南の空での太陽の通り道:太陽の位置は赤緯0°を中心に南北に移動します。

 
●南中の時刻も季節によって変化する

「均時差」があることで、南中時刻も大きく変化します。広島を例にして紹介します。

・南中時刻がいちばん早い日・・・11月 3日ごろで、11時53分44秒
・南中時刻がいちばん遅い日・・・ 7月26日ごろで、12時16分42秒

 調べてみてわかったことですが、実に23分も違っているのです。この変化は季節を通じて徐々に変化していきます。同じ時刻に、カメラを固定して太陽を撮影したとします。一(ひと)月に数回ずつ撮影したものを合成すると、「8の字」のような軌跡が現れます。これを、「アナレンマ」と呼んでいて、このようになるのも、「均時差」のせいなのです。季節によって公転のスピードが変わることと、地軸の傾き(太陽の見える位置)によって西に進んでいく太陽の動きがかわることで、同じ時刻に太陽を見ると、複雑な動きをしていることがわかります。興味がある方は、一年間通して、「定点観測」(定点撮影)をしてみられるとよいでしょう。「ステラナビゲータ」などの、天文シミュレーションソフトでも確かめることができますよ。下の図は、正午ごろの「アナレンマ」のようす描いてみました。日の出の頃には、左側に傾いた状態になり、日没の頃は右側に傾いた状態になります。「8の字」の状態からわかるように、夕方は「8の字」の右側、つまり12月の初め頃が、明け方では「8の字」の左側、つまり1月の初め頃が、太陽の位置は、地平線に近いことがわかります。このことについては、リンク先(「パレットおおさき」のページ)で、詳しく説明されています。

←アナレンマの図:東西のブレはやや大きめに描いています。

 

●朝が辛い・・・。

 「均時差」があるため、日の出の時刻は年明けにいちばん遅くなります。寒さはだんだんと厳しくなって来るし、朝はまだ暗いし・・・。年明けの出勤には、辛いものがありますね。「朝日が早く昇るようになったなぁ」と、感じられるようになるのは、2月中旬ぐらいになってからです。この時季、私は、ついつい朝寝坊をしてしまいます。さらに、毎朝、布団から出るのが億劫になることが多い時季ですが、みなさん、暗さと寒さに負けないでがんばっていきましょう!

 ←日の出・日の入りのグラフ

1年間の日の出・日の入りの時刻をグラフにしました。日の出・日の入りの時刻のピークが夏至と冬至のときと一致していないことがわかります。

●おわりに

 文に書くだけではわかりにくいので、手描きの図を入れました。わかりやすくなったでしょうか?絵は、文章とともに、できるだけわかりやすく書いたつもりですが、説明文や絵にして表すのは予想外に難しかったです。また、こちらに、「アナンレマ」を含む、今記事が掲載されています。とてもわかりやすいと思うので、下記のURLを入力して、ぜひご覧になってください。

※パレットおおさき・大崎生涯学習センター:「冬至の頃の日の出・日没時刻」
 http://www.palette.furukawa.miyagi.jp/space/astronomy/tenmonsiryou/touji_081221.html

※私が発行しているメルマガ、「ほしやそらのこと」でも、記事にしています。下記のURLは今年発行した記事のものです。
  http://melma.com/backnumber_48044_5368389/
 毎年、この時期(冬至や夏至)になると、記事にしています。天文や気象に関するメルマガです。よかったら、読んでみてくださいね


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