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62.巨大な釣り針〜「さそり座」

 夏の星座は、天の川とともに東の空からのぼってくる。この天の川の流れに沿って、北から「はくちょう座」、「こと座」、「わし座」と、夏を代表する星座を見ることができるが、もっとも夏を代表する星座と言えば、大きなS字のカーブを描いている「さそり座」であろう。「さそり座」はその形から、ちょうど大海に投げ込まれる釣り針のように見えるところから、「魚釣り星」とか、「鯛釣り星」などと呼ばれている。

63.「さそり座」にまつわる神話

 昔、オリオンという名前の勇者がいた。このオリオンは、「この世に自分より強い者はいない。」と、いつもいばっていたので、これに怒った女神ヘラは毒さそりを遣わしてオリオンを殺してしまった。この功績によって、さそりは星座になったのである。オリオン座は冬を代表する星座であるが、このオリオンはさそりを大の苦手としている。そのため、オリオンはさそりが西の空に沈むころ東の空からのぼってきて、さそりが東の空から顔を出すころには、オリオンは西の空に沈んでしまうのである。

64.「さそり座」の星々

 「さそり座」の中でいちばん明るいのは、さそりの心臓の所で真っ赤に輝く「アンタレス」である。アンタレスという名前の意味は、「火星に対抗するもの」とか「火星の的」、または、「火星のように赤い星」です。実際に、時々火星が近付いて来て、その赤さと明るさを競っています。赤さでは火星に、明るさではアンタレスに軍配が上がるようで、この勝負は結局のところ”引き分け”のようだ。アンタレスがあまりにも赤いので、日本では「赤星」とか、「豊年星」とか呼ばれている。そうかと思うと、「酒酔い星」と呼んでいる所もある。ちょうど酒を飲んで酔っぱらっているように見えるからだろう。もちろん、星が酒を飲むはずがない。赤い理由は星の表面温度が低いためである。アンタレスは太陽の約740倍もある大きな星で、一生の終わりに近付いているため、膨らんだり縮んだりしているそうである。このため明るさが変化していて、このような星のことを「脈動変光星」と呼んでいる。
 さて、その真っ赤なアンタレスのもう少し南の方を見てみよう。3等星の星が2つくっついて並んでいるのが見える。この2つの星が交互にチカチカ瞬くようすが、あたかも相撲を取っているように見えることから、「すもうとり星」というおもしろい名前がついている。ところで、星がチカチカと瞬くのは、地球の大気のせいである。春先から初夏にかけて、屋根や道路のまわりにある物がゆらゆらと揺らいで見えたという経験があると思う。あれは、「かげろう」という現象であるが、星がチカチカと瞬くのと、理由はよく似ている。


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