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27.「北斗七星」の物語

 北斗七星に関するもの語りはたくさんあるが、私が聞いたことがあるものを紹介することにします。

その@ 「母子熊」の話
 昔、ある所に美しい娘がいた。その娘が美しすぎたために、不幸にまきこまれることになる・・・。
ある日のこと、その娘を天上で見ていた神が好きになってしまい、娘とつきあうことになった。ところが、その仲良くしている様子を、神のお后に見られてしまった。やきもちやきのその后は、それが不愉快でたまらない。そこで、娘の前に現れてこう言った。
「おまえは、家の夫を惑わせてしまった。それはいけないことだ。おまえは熊になるとよい。」
「お許しください。わたしは決してそんなつもりはなかったのです。どうかお許しを・・・。」
 しかし、娘の手の先からは爪が生え始め、両腕には毛が生えてきた。そして、泣き声は熊の唸り声に変わっていき、やがて、1匹の熊の姿に変わってしまったのである。
その熊は、1人の人間の赤ちゃんを産んだ。しかし、熊になった娘には育てることはできない。しかたなく、泣き叫ぶその子をおいて、母熊は立ち去ったのである。
10数年が過ぎた。娘の子は、立派な少年に育っていた。母熊は、我が子と再会したよろこびのあまり、少年に近付いていった。しかし、少年からは、大熊が襲ってきているようにようにしか思えなかった。少年は、自慢の弓矢を母熊の胸に向けた。
今にも弓矢が放たれようとしていた時に、天で見ていた神は、「おまえたちは熊になるとよい。」と言って、天上に引き上げたのである。
こうして、親子の熊は星座になった。しかし、神の后はそれが気に入らなかった。そこで、別の神にこう頼んだ。
「あの、親子熊だけは、海で一休みさせないで、いつも天に置いておくように。」と・・・。
それで、他の星座は、1日に1回は、海の中に入って一休みできるのに、母子熊は海の中に入ることができず、1日中、北の空に出たままになったのである。

 北半球では、「おおぐま座」と「こぐま座」が、いつでも見ることができるのは、このような理由からなのだ。

そのA 「星になった柄杓」の話

 あるところで、病気の母とその娘が暮らしていた。娘は、病気の母のために一生懸命に働いていた。
 ある日のこと、病気の母が「水を汲んで来てくれ。」と娘に言った。娘は、母の願いを叶えるために、木の柄杓を持って、近くの湖に水を汲みに行った。水を汲んで家に帰っている時のことである。1匹の子犬が少女のところにやって来た。子犬は、少女の持っていた柄杓の水を飲んでしまった。「大切な水をどうしよう・・・。」と少女が悲しんでいた時のこと。その、木の柄杓は、銀の柄杓に変わり、その柄杓の中にはまた水がいっぱいになったのである。 こうして、少女は家に帰った。そして、その水をお母さんに飲ませようとしていた時のことであった。家の戸を叩く者がいる。少女が戸を開けると、1人の旅人が転がり込んで来てこう言った。「どうぞその水を私に飲ませてください。私はのどが渇いて死にそうなんです。」
 少女は、その水を旅人に飲ませてやった。枕元でその様子を見ていた母が言った。「その水を全部旅人におあげ。私はもう長くないんだから・・・。」そうするとどうだろう。銀の柄杓は金の柄杓へと変わり、また、その柄杓には水が溜まり、溢れ出して来たのである。そして、その柄杓の底には、7つのダイヤモンドが輝いていたのである。
 やがて、母の病気も治り、幸せに暮らしたということだ。また、7つのダイヤモンドは星になって、夜空で輝くようになった・・・・・・。

 どちらも、記憶を頼りに書き出したものなので、ちがっているところもあるとは思います。でも、どちらも、素敵な物語だと私は思っています。


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